アラフィフジプシーナースのブログ

「精神科医にも拳銃を」で波紋 医師や看護師は危険と隣り合わせ

2018/11/26
 
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以前、精神科の看護師は患者からの暴力を受ける機会も多く、それが病棟であれ外来であれ、楽に仕事ができると考えない方がいいということを書きました。

今日、たまたま「精神科の患者からの暴力の危険」について書かれている新聞記事を目にして、その内容が、現場の精神科医がそのような声をあげたことへの批判というものでした。

この記事を読んで、私も感じることがあり、考察をまとめたいと思いますので、興味のある方はお付き合い下さい。

 

「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」が大問題となり批判される

発端になったのは、日本精神科病院協会の学会長が、協会機関紙に、ある文章を載せたことでした。

この協会は、全国の精神科病院で構成されている団体です。

 

その文章は、病院勤務のある精神科医が、精神科の患者からの暴力の危険について問題提起したものでした。

「もはや患者の暴力は治療の問題ではなく治安問題」「精神科医にも拳銃を持たせてくれということです」とこの精神科医が述べた意見を学会長が引用したものでした。

その精神科医は、近年、患者の行動制限を最小限にと減らしていく一方で、暴力の危険にどのように対応するのかも課題として挙げていました。

米国での例として、武装した警備員の配置、暴れる患者の拘束や拳銃の発砲という対応があったことなども説明したそうです。

 

この意見に対する学会長自身の見解は、そこに書かれてなかったものの、協会としても、患者からの暴力への対応を検討していることが書かれてあったとのこと。

 

ところが、この掲載文章が患者や支援団体から批判の的になったのです。

その理由は「患者を危険な存在と決めつけている」ということです。

「精神科医療の身体拘束を考える会」を始めとする団体は、この意見に対する抗議集会を開き、結局、この学会長の文章は、削除されるに至りました。

 

これを読み、患者からの暴力の危険を問題提起した精神科医の意見に何の問題があるのか?と感じました。

確かに、銃社会のない日本において、拳銃を持たせろとまで言うのは極端かもしれませんし、その表現がまずいというのはわかります。

 

しかし、「患者からの暴力」について口にすることすら差別であるかのように批判し、精神科医の意見をよってたかって削除、封印させてしまうことの方が恐ろしいのではないでしょうか。

 

きれいごとではない・精神科医も看護師も患者から暴力を受ける

私は、精神科の急性期病棟の看護師として勤務経験があります。

精神科は、一般病棟の看護師として走り回ってボロボロになって働いていた時には、「精神科の看護師は定時に帰れそうだし、することも少なそうだし、楽しそうでいいなー」というように勝手に想像していました。

おそらくそういうイメージは、看護師の間にあります。

看護学生の時に精神科実習には行きましたが、指導看護師がついているので危険な目にも遭遇しないし、短い期間の中でいいところしか見てないですし、実際に楽しそうに見えました。

でも、看護師として勤務してみたら、陰の部分や危険も見えたというか、それが現実であることもわかりました。

*参考記事

精神科の看護師は患者からの暴力も多い 楽と思ったら大間違い

 

病状だから仕方ない・そんなことは医師も看護師も理解している

私は、別に精神科の患者さんに恨みがあるわけでも何でもありません。

精神科という診療科や患者さんと関わるのが嫌になって辞めたというわけでもありません。

 

患者さんが暴れることも興奮して暴力的になることも、病気の症状の1つであり、患者さん自身で制御がきかないものであることは、もちろんわかっています。

中には、症状というより性格であるということもありますが、少なくとも、精神疾患を持っていることがその患者さんのせいではありません。

病気が回復するにつれ、見違えるように温和になる患者さんもいます。

 

そんなことは、精神科医も看護師もわかっています。

しかし、現場はきれいごとではないのです。

人権だの何だの言っていられない修羅場が日常にあります。

 

危険でも関わらなければ治療は進まない

精神科の患者さんも病状はそれぞれ違い、疎通性がよくて会話が成立する人と、全く疎通ができない人がいます。

おとなしい人もいれば一方的にハイテンションで喋り続ける人もいる。

怒りが主な症状として表れる人もいれば悲壮感に包まれている人もいる。

病気も違いますし、同じ病気でも症状の表れ方も違いますし、元々の性格も違います。

 

「どんな行動に出るかわからない、怖い」というような危険な雰囲気の人もいます。

精神科医も看護師も丸腰で生身の人間ですので、怖いものは怖いです。

 

暴れていて、警察がらみでパトカーに乗せられ警察官数人に連れて来られる患者さんもいます。

普通ならすぐに効いてくるような強めの鎮静剤を注射しても全く効かず、ガタイのいい男性看護師が何人もかかって毛布にくるみ、隔離室(保護室)に運んで来るようなこともあります。

 

妄想に振り回されていたり、興奮、錯乱していたりする患者さんは、数人がかりでないと抑えきれないほど力が強く、衝動性に満ちていることはよくあることです。

手足抑えても、噛みつかれるのですから、看護師だって必死です。

 

それでも、関わらなければ何もできないのです。

まず何とかして注射で薬を投与し、興奮を鎮めていかないと、治療に導入することすらできません。

 

外来も病棟も隔離室も条件は同じ

精神科の患者さんからの暴力による危険は、病棟とか外来とか、どこの部署もあまり変わりはないと思っています。

療養病棟なら病状も落ち着いているし安全、と思っても、病状はいつ変化するかわかりませんし、それを発見するのも看護師の役割です。

確かに急性期病棟の方が、症状の激しい、疎通性の悪い患者さんが多いのは間違いないですが。

そういう患者さんもみんな外来を通って来ます。

 

誰が来るかわからない外来

外来だったら、通院の患者さんなので病状は重くないと思うかもしれませんが、外来はどんな患者さんが飛び込んで来るか、把握できません。

診察室では精神科医と2人になりますし、危険なことも起こる可能性はあります。

一般の外来でも同じことは言えますが、精神科は特に、妄想に支配され理性が利かなくなって、精神科医への逆恨みを募らせている患者さんもいます。

それに、外来は手荷物検査をするわけではないですから、何を持ち込んでくるかもわからないです。

 

1人でラウンドする病棟の夜勤

精神科の病棟の夜勤体制は、私が勤務した病棟では3人で、そのうち1人は病棟に付属する隔離室(保護室)を担当し、女性看護師と男性看護師を組み合わせるようになっていました。

しかし、この人員配置も男性看護師の数によります。

精神科は男性看護師が揃っていることは多いのですが、病院によっては圧倒的に女性看護師が多いというところもあり、そんなところは女性だけで夜勤を組むことになります。

 

だけど、担当する部屋はそれぞれあるので、夜勤のラウンドは1人で行きます。

これは、結構、緊張感を伴います。

病棟内は消灯していて、部屋も真っ暗ですので。

鉄則だったのは、部屋に入った時に入り口のドアが閉まらないようにすること。

 

夜中に、男性患者さんからベッドに引きずり込まれそうになった女性看護師もいたそうで、性衝動が抑制できないことが病気であることもあるからです。

普通はびっくりしますが、自慰を手伝ってと看護師に声をかける患者さんもいました。

 

精神科病棟においても、時間ごとのラウンドは、強い薬を使っていることが多いので呼吸状態など、患者さんに異変がないかを観察するために必要なのです。

 

鍵を開ける時が危険な隔離室(保護室)

保護室のことを隔離室とも呼んだりします。

個室に鍵をかけて、扉も二重になっていて中からは開けられない特殊な作りの部屋です。

その中にトイレもあります。

外廊下があり、そちら側の窓は鉄格子があります。

 

ここは精神症状が重い患者さんで、自傷他害の恐れがあって病棟では無理と考えられる場合に使う部屋です。

夜勤の時にこの鍵を開けることは通常なく、外廊下側から観察します。

暴力的な患者さんも隔離室対象であり、危険があるのは、昼間に鍵を開放する時です。

その瞬間を狙っている患者さんもいるからです。

ちなみに、隔離室から何年も出られないほど、衝動性が重度で病状のコントロールのつかない患者さんもいます。

 

医療従事者も危険から我が身を守りたい

精神科の患者さんが全て危険とも言いませんし、だいたい、そんな危険なところなら入院しているおとなしい患者さんはどうなるのかという話です。

もちろん、入院中の他の患者さんを危険にさらさないように配慮し、部屋や行動制限を段階的に見直していくのです。

 

しかし、直接患者さんの治療やケアに関わる精神科医や看護師は、病状の悪い時から接するわけですから、暴力を受けることがあります。

殴られて歯が折れた精神科医もいますし、蹴られて骨折した看護師もいます。

怪我はなくても叩かれるなどはよくあることです。

一般病棟ではそのようなことを起こせば強制退院などの措置がとられます。

でも精神科は、病気だからということになります。

 

今回の精神科医の「拳銃を持たせてくれ」は言葉の例えであり、実際に拳銃を持つことは不可能であることなど当たり前のことです。

その言葉の本質は、精神科医や看護師に向けられる暴力の危険について対策を求めたいということにあると思うのですが、暴力の危険という問題提起自体、否定されなければならないのでしょうか。

それなら誰がそのような患者さんに対応していくのでしょう?

どこの現場でも問題になる事実なのに、そんなことは起こらないと言うのはおかしいです。

 

精神科の看護師は、危険手当があるわけでもなし、はっきり言って給料も安く、待遇はよくないです。

その上、暴力への対策も立てられないなら、そんな危険なところでは働けないです。

 

まとめ

このブログは読んでいる人も少ないのをいいことに、私の好きなように書いています。

とは言え、こういう問題は現実であり、それなのにそれを抹消するかのような方向に進むことには、やはり疑問を感じます。

身体拘束についても賛否ありますが、むやみにおこなうべきではないとは思っても、全くそれを使わずにというのは、無理だと思います。

その話はまたいつか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

*おすすめ記事

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