看護師の仕事はハードですが、多くの看護師が「やりがい」に支えられて仕事をしています。
だけどそれだけでなく、できれば楽しく仕事をしたいですよね。
精神科は何となく楽で面白そうなイメージがあるのか、精神科に転職したいという看護師は結構いました。
精神科勤務で楽しいことはありますが、辛いことももちろんあります。
今回は精神科勤務していた時の私の体験談です(^-^)
精神科の患者さんは計画通りには動かない
私は転職を何度もしたおかげで、一つの道を究めるということには残念ながら縁がありませんでした。
その分、いろんな世界を見てきたのは面白かったです。
病院違えば常識も違い、診療科ごとに看護師の会話も変わる、大げさですが本当にそんな感じもあります。
精神科は看護学生になった頃から興味があったので、いつか働いてみたいと思っていました。
看護師免許を取ってすぐに精神科に就職した同級生もいます。
私はまだ若かったので、卒業後はいろいろな看護技術を身に着けられる職場で仕事をしました。
私が精神科に就職したのは、一般科で十分仕事をした後の話です。
もちろん学生の時の臨床実習は精神科にも行きました。
病棟の看護師はドタバタしているわけでもなく、モニターの音が響いているわけでもなく、輸液を山ほど積んだワゴンで部屋まわりしている看護師もいませんでした。
一般科に比べたら、たしかにゆったりした第一印象です。
私の受け持ち患者さんは若い女性で、意思の疎通が全くできず入浴もずっと拒否して寝ている状態でした。
思いきり髪がベタベタのその人を何とかお風呂に誘導し、清潔な習慣に導こうというのが私の日々の主な計画でした。
看護計画をせっせと立てましたが、精神科ほど看護計画丸つぶれになる科はなかったかもしれません。
一度だけ浴室に誘導することに成功しましたが、何がきっかけだったかは忘れました。
でも別に何か画期的なプランを立てたわけではなく、要するにたまたまだったのです。
だけど、シャンプーやら何やらを持ってついていく私など無視して、彼女は服を廊下に脱ぎ捨てながら浴室まで歩きました。
そしてそのままずんずん中に入って、いきなり浴槽にザバーっと入ったかと思ったらすぐにザバーっと出て、待機していた私を通り過ぎ、自分が脱ぎ捨てた汚れた服を着て部屋に戻っていきました。
それでも精神科の看護師は、私のプランを否定しませんでした。
「うんうん、お風呂に行く気になったしとりあえずは良かったね」というゆるい感じでフォローしてくれました。
精神科は根気が必要です。
わかってはいましたが、精神科の看護師になって改めて、患者さんの行動に常識を当てはめようなど無理なことを実感することになります。
閉鎖病棟は鍵の管理が全てと言っても過言ではない
私が勤務していたのは急性期の閉鎖病棟で、あらゆるところに施錠がしてありました。
閉鎖病棟の看護師はマスターキーを持たされています。
全ての場所の鍵はそれで開閉します。
鍵の管理はとにかく厳しく、鍵が体から離れるということは許されません。
例えばキーホルダーに付けてポケットに入れておくというような無造作な持ち方ではだめなのです。
鍵を落とさない、失くさない、患者さんに奪われないことが重要なので、キーホルダーは白衣などに固定できチェーンなどの長さのあるもので、そのまま鍵を体から外すことなく使用できるものを選びます。
また、鍵をどこに持っているかは患者さんに悟られてはいけません。
鍵を奪われないようになどと言うと、とんでもなく物騒な感じがしますが、患者さんを守るためにも看護師がしっかり責任を持って施錠を確実にしなくてはならないのです。
精神科にはいろいろな患者さんがいます。
入院していることを受け入れている方もいますが、外に逃走する(離院)機会をずっと狙っている患者さんもいます。
閉鎖病棟ではエレベーターを動かす時も鍵を使います。
だから患者さんが勝手にエレベーターに乗ることはできないのですが、エレベーターの近くで毎日待機している患者さんもいるのです。
何をするにもいちいち鍵がいるので、私も慣れるまではとても不自由を感じました。
そして、これがないと何もできないという窮屈さも感じました。
閉鎖病棟は、「まず鍵になれる」ことに尽きます。
精神科のナースステーション前には患者さんが列をなす
一般の病棟では、ナースステーションの前に患者さんがいると目立ちますし、何か用事かな?と誰もが気づきます。
でも精神科病棟のナースステーション前には、朝になると患者さんが集合するとでも言った方がいい状況です。
もちろん、みなさんそれぞれに用事があって来ています。
精神科では患者さんの持ち物も制限されるので、夜間はナースステーション預かりという持ち物などもあります。
そういう制限は個人個人で異なり、自己管理を許可されている人もいるし、時間制限はあるけど許可されている人、全く許可がない人など様々です。
もちろん病棟への持ち込みそのものがだめな物品もありますが、例えば携帯電話や決められた本数のたばこ、洗面用具などです。
そういう預かり品を朝になるともらいに来るのですが、集合する用事はそれだけではありません。
看護師に何か訴えに来る人や頓服の薬を要求している人もいます。
とにかく看護師は、朝は窓口対応に追われます。
耳を傾けるととりとめのない内容を延々と語る患者さんも多く、それをうまく切り上げる技術も必要です。
ナースステーション前がごったがえすのは、精神科独特の光景と言ってもいいと思います。
いろんな科で仕事をしましたが、あんな混雑は精神科しかありません。
用があるのかないのか、混雑の中で座り込んでいる人や寝転がっている人もいます。
最初はびっくりしますが、慣れると大体その人の用事がわかるし、対応もスムーズにいくようになります。
楽しいことも辛いこともやりがいもこれに尽きる
精神科の仕事は、楽しいことも辛いことも全ては患者さんとのコミュニケーションと思います。
それは精神科に限ったことではないかもしれませんが、精神科は特に患者さんの症状もあり、疎通困難は日常的です。
喋れないとか意識がないということではなく、会話はできるとしても意思の疎通が難しいのです。
会話として構成を成していない、ただ意味不明に言葉を羅列するだけの患者さんもいますし、論理的に話しているけど、内容が一般の常識とはかけ離れているということもあります。
行動も摩訶不思議なことは多いです。
毎日、同じ妄想の内容を話しに来る人もいます。
お風呂に入らない人なんてざらにいます。
全部が日常茶飯事で、毎日根気強いコミュニケーションが必要になります。
精神科の看護師は、あまり常識にとらわれずに人を受け入れることができなければ、仕事内容は辛いと思います。
精神科では、患者さんから感謝の言葉などあまりもらえないし、反対に逆恨みやなぜか嫌われるとかいう理不尽に辛いことも多いです。
そういうことをわかっていて、「私は精神科の患者さんは嫌いだから精神科では絶対に働かない」とあえて決めている看護師もいます。
精神科では、意思の疎通がうまくいった時が楽しい瞬間であり、その人を理解し寄りそえた時にやりがいを感じることができると思います。
まとめ
看護師も人間なので、患者さんの反応が支えになることもあります。
それがやりがいだとしたら、精神科ではそんなやりがいは得られにくいかもしれません。
ただ、精神科の患者さんもそれぞれに背景があったり歴史があり、それが理解できるならその人のことも受け入れやすくなります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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