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鑑定留置中の脱走で思う精神科閉鎖病棟のセキュリティ

2018/11/26
 
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先日、鑑定留置で精神科病院に入院中だった男が病院の窓から脱走するというニュースが流れ、緊張感に包まれました。

脱走の翌日の夜に無事確保されて、本当に良かったです。

鑑定中の罪名は放火ですので、脱走して何をするかわからないではないですか。

素朴な疑問として、鑑定中は保護室を使わないのでしょうか?

精神科病院の窓が簡単に開いたらまずいのでは?

今回思ったことをまとめてみますのでよろしければお付き合い下さい。

 

精神鑑定とは何か

精神鑑定とは、その事件において責任能力があるかどうかを調べるためにおこなわれるもの、というのは、なんとなくわかりますが、その内容は法律が複雑に絡んでいてややこしいです。

 

まず、日本の刑法では「心神喪失者の行為は、罰しない。(刑法第三十九条)」および「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。(刑法第三十九条2)」と定められています。

刑事責任能力について、1心神喪失であるのか、2心神耗弱であるのか、3完全責任能力があるのか、という判定をする必要があります。

その判定するにあたり、専門家である精神科医の意見を仰ぐために精神鑑定がおこなわれます。

 

1は無罪

2は減刑

3は有罪

 

精神障害がない、または、精神障害があっても善悪の判断や行動する能力はある、または、能力が障害されていても著しいものではない場合は有罪になります。

 

そして、この鑑定にも、「起訴前鑑定」「公判鑑定」さらに、重大犯罪であったにも関わらず不起訴になったケース、裁判で無罪になったケース、減刑があり執行猶予になったケースの対象者について、入院または通院治療を受けさせるかどうかを鑑定する「鑑定入院」というものがあります。

「鑑定入院」は医療観察法という法律に基づくもので、2003年に制定されたものです。

 

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)は、心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、強制性交等、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度

厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/

 

脱走したこの男は鑑定留置中

では、この男の鑑定留置とはどういう状態だったのでしょう?

 

鑑定留置とは、容疑者の段階で、精神障害による刑事責任能力を問えない可能性がある時に鑑定の為に一定の期間、病院などの施設で身柄を拘束(留置)することです。

 

以上から、鑑定留置は起訴か不起訴か確定していない段階であり、「起訴前鑑定」であったことがわかります。

この「起訴前鑑定」にも、1日以内で終了する「簡易鑑定」と2ヶ月程度の期間を設ける「起訴前本鑑定」というのがあるようで、入院中だったこの男に関しては後者だったということでよいのでしょうか。

 

私は法律の専門家ではないので、どこか抜けているところがあるかもしれませんがご容赦下さい。

詳しくは厚労省のHPなどで確認できます。

 

男が病院から脱走した経緯

前置きが長くなりましたが本題です。

 

この男(57歳元会社員)は、2018年2月、元妻の家に放火して逮捕されました。

そして、3月より3ヶ月の予定で、とある国立病院(精神科の単科)にて鑑定留置中でした。

 

ところが、5月22日夜9時過ぎ、入院していた病室(2Fの準保護室)の窓をこじ開けて、衣服を繋げて自作したロープを使い、4、5m下の地上まで脱走。

院内で異常を知らせるアラームが鳴り、職員が駆け付けた時には病室の窓が開いており、容疑者の姿はなかったとのこと。

本来、この窓は10㎝くらいしか開かないようになっていたそうです。

また、病棟から外に出る時にフェンスがあるようですが、これもそれほど高くはないようです。

 

指名手配で警察が行方を追っていましたが、5月23日夜、家電量販店のソファーに座っているところを発見されて確保されました。

この男がいた家電量販店は、元妻の家の近くにあるそうです。

確保されたから良かったようなものの、ゾッとしました。

この男にストーカー気質を感じます。

 

精神科病棟の構造とは

精神科病棟にはいろんなタイプがありますが、大きく分けたら閉鎖病棟開放病棟かということです。

その違いは、病棟の外から鍵をかけるのか、かけないのかということです。

 

療養棟は開放病棟のことが多く、オープンなので患者さんは出入り自由です。

出入り自由な病棟なので、要するに他の一般的な病院と同じですよね。

もちろん、一般的な病院でも、患者さんが許可もなしに勝手に病院から外出したりはできませんよね。

つまり、開放病棟にいるのは、病状が安定して退院が近いとか、入院中のルールを守ることが可能な状態の患者さんです。

 

同じように病状が固定した慢性期療養病棟でも、閉鎖病棟もあります。

こちらは、急性期ではないにしろ、その症状から社会性に乏しく、自由に出られる環境下では事故などの危険が予測される場合です。

 

そして急性期は全て閉鎖病棟になっています。

私は急性期の閉鎖病棟の勤務しかしたことがありません。

そんなわけで「精神科はゆったりして楽な職場」と思ったことはありません。

 

いつでもどこでも鍵をかけ忘れるなどあってはならないことですし、その鍵を失くすとか患者さんに奪われるとかはもう絶対だめです。

すごい形相でうめき声をあげていたり、落ち着かず廊下を疾走する体格のいい男性患者さんとかいると、本気で怖いです。

現場はいつどこから殴りかかって来られるかわからないのが日常で、実際に叩かれたり蹴られたりは珍しくないのです。

しかも患者さんに責任能力はないことになるので、偏見だとか何だとかのきれいごとは聞きたくないという感じ。

現場は優しいだけではすまないのです。

 

*参考記事

精神科の看護師は患者からの暴力も多い 楽と思ったら大間違い

 

ちなみに、病院によっては男性の急性期病棟、女性の急性期病棟、というようにわけているところもあります。

 

この急性期閉鎖病棟の中に保護室と呼ばれる個室が存在します。

療養病棟の中にも、患者さんの病状が急変した時の対応の為に保護室は一応ありますが、閉鎖病棟には本格的に保護室エリアがあるのが普通だと思います。

保護室エリアは、病棟と頑丈なドアで区切られ、そこにも鍵があります。

とにかく、閉鎖病棟はどこもかしこもエレベーターも全部、鍵、鍵、鍵。

保護室はさらに個室のドアが二重扉で鍵が外からかかり、内側からは開かないです。

そして保護室を囲む外廊下があり、個室の廊下側には全て窓があって採光はいいのですが、窓の外側には鉄格子があります。

 

精神科の離院は時に起こる現実

近所の人の話によると、この病院は過去にも患者の脱走はあったということですが、はっきり言って、精神科入院中の患者さんが脱走(正確には離院というのです)するということは、たまに起こります。

 

私が勤務していた時にも離院には遭遇したことがあります。

それは開放病棟の患者さんで、自分の病棟ではないのであまり詳しくはわかりませんが、患者さんは家に戻っていたようでした。

開放病棟では、扉が開くので無理もないように思いますが、あえて開放病棟にいる患者さんだけあって離院はそれほど頻繁にある話ではありません。

 

また、任意入院であれば、その人が退院を申し出ればすぐに退院させなければならないのが精神科の原則なので、無理やり連れ戻して病院内に拘束することなどできません。

安全を確認後は退院ということになります。

精神科は、法的な絡みで入院形態はとても重要です。

 

どちらかと言えば、閉鎖病棟の患者さんの方が脱走の危険があると思います。

もちろん、そんな行動力のないおとなしい患者さんもいて、全部が危険な人とか言っているわけではありません。

でも、閉鎖病棟に入院中の患者さんは、派手な陽性症状のピークにあることが多いのは現実です。

 

保護室の中でも大暴れでトイレを壊して床を水浸しにしたり、排泄物を撒き散らかしたり、精神症状がひどい時にはとにかく信じられないような力でいろいろな行動を起こすこともある。

なので、閉鎖病棟では離院にもとても神経を遣います。

 

今回の脱走は、鑑定留置中であり、裁判所の命令で入院中の被疑者でした。

それが窓を壊して洋服で作ったロープを伝って脱走。

いくらこじ開けたにしろ、準保護室の窓がそんなに簡単に開けられることにびっくりしました。

おとなしくしていたのかもしれませんが、放火犯ですから。

それも自分の部屋でボヤを出したわけではなく、元妻の家に故意に火をつけたわけで。

もっとしっかりした保護室で対応しなかったのはなぜなのでしょう。

私が過去に出会った鑑定の患者さんは、短期でしたが保護室対応でした。

今は時代が変わったのでしょうか。

それとも、拘束が長くなれば人権問題になるリスクを避けたとか?

 

元妻の家の近くで何をしたかったのか、元妻も恐怖ですが、近隣の人も、放火されるかもと考えたら生きた心地がしませんよね。

ちょっと前に刑務所から窃盗犯が脱走しましたが、それよりも判断力不明な放火犯の方が怖いと私は感じました。

 

まとめ

この男は、ここまで計画的に脱走できたのですから、責任能力十分あるということを自分で証明したようなものと思います。

ご丁寧に洋服でロープまで作れたのですから、かなり能力も高いと言えるのではないでしょうか。

もう鑑定は必要なしで実刑でよくないのですか。

鑑定が慎重に行われるべきというのはわかりますが、その取扱いは厳重にして欲しいものです。

精神科は刑務所ではなく、本来は、本当に治療の必要な人の医療機関で、普通におとなしく入院されている方もいるのです。

それとも、本人の人権ではなく、周囲の安全管理を考えると偏見になるのですか。

私は、周囲や他の患者さん達の安全も守られなければならないと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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