自分の働く介護施設の入所者に熱湯をかけ、重度の熱傷を負わせたとして、介護士の男が逮捕されました。
介護施設での虐待事件は、残念なことに今までにもいくつもありました。
この被害者は認知症があったそうです。
仕事はさぞかし大変だったのだろうということは想像がつきます。
でも越えてはいけないラインがある。そんなことは百も承知だったはずなのに・・・。
被害者は重度の認知症だった
老健施設は和歌山県にあり、事件が起きたのは2018年1月9日の深夜1:20とありました。
この時間帯は、この介護士の夜勤の最中だったということですね。
被害者は96歳の女性です。
重度の認知症があったという情報が出されていました。
動悸は、その女性が夜中に大声で叫び黙らなかったから腹が立ったと介護士本人が認めています。
ポットのお湯をコップに入れてそれを女性にかけ、被害者の女性は顏から首にかけて重傷を負って他の病院で入院治療中とのこと。
重度の認知症の患者さんが叫ぶのも、結構多い症状です。
黙れと言って理解できるような簡単なことなら、認知症の介護で苦労することもないですしね。
いや、そんなことは、この加害者は介護士ですから、誰よりも本人が一番わかっていたと思います。
夜中に叫び続けると、他の入所者の方が迷惑します。
眠れない方もいるかもしれません。
老健施設は、入院から在宅の間に位置している、医療やリハビリが提供できる施設です。
認知症専門の施設ではありませんから、いろいろな入所者の方がいらっしゃると思います。
どんな理由があってもやってはいけないことがある
介護士の男は、叫び続ける認知症の女性を何とかおとなしくさせたかったに違いありません。
どのくらいの時間をこの被害者に費やしたのでしょうか。
老健施設の規模にもよるとは思いますが、一般的に介護施設の夜勤人員は決して余裕があるものではないと思います。
そして、その仕事はただ不穏状態の方の相手をするだけではありません。
他のルーチンの業務もあります。
夜中の1時くらいだったら、オムツ交換にまわる時間帯ではなかったかと思います。
思ったように仕事が進まずイライラするのも、時間に追われて焦るのも、疲れるのも、十分想像がつきますよ。
個人的に夜勤が続いていたのかもしれません。
休みが取れてなかったとか、そんな理由があって、普段から疲労が限界に達していたのかもしれません。
想像するだけで、実際にこの介護士がどんな人でどんな事情かは全くわかりません。
それでも、どんな事情があろうが、やってはいけないことがあります。
なぜそのラインを越えてしまったのか、とても残念なことだと思います。
この介護士は24歳です。
最近では、介護職に就く人が減ってしまっていると聞きます。
どこも介護職を募集しています。
私の知人にも施設責任者がいますが、必死で求人してますよ。
メインとなる働き手である介護士がいないと、事業所は運営そのものも難しくなります。
そんな中で、若くて体力のある男の介護士は貴重な存在だったはずです。
倫理とは何なのか
今回の介護士と比較できないほど悪質ですが、最近、高齢者を狙った強盗殺人事件が報道されていました。
被害者はそこで一人暮らしをしていた85歳の女性でした。
85年長生きして、なぜ最後にそんな亡くなり方をしなければならないのか。
老後を静かに暮らしていたでしょう。
映像では、庭に実のなる木がありました。
そんな優しいものに囲まれて、これからも穏やかに過ごせるはずだったのに。
聞いているだけで、その被害者の写真や家が映し出されるだけで、胸が苦しく、腹立たしく、痛ましい事件でした。
加害者にとって、被害者の姿は自分のおばあちゃんではなかったのでしょうか?
人として越えてはいけない一線を越えたということでは、事件に悪質も何もなく、同じとも言えるのかもしれません。
どんな理由でも理由にならない、絶対にやってはいけないことがあるのです。
人としての倫理はそんなにも失われやすいものなのでしょうか?
陰性感情がコントロールできないなら職場を離れた方が安全
人は感情のある生き物ですから、たとえ仕事と割り切っているつもりでも、相性が合うとか合わないとか、好きとか嫌いとかがあるのは仕方ないと思います。
看護師だって申し訳ないけど、どうしても好きになれない、苦手、嫌いという患者さんはいますよ。
それを自分で認めずに、自分の心に無理を強いる方がきついと思います。
嫌なら嫌という自分の感情をひとまず受け入れてしまった方が楽ではないでしょうか。
私はそれほどできた人間ではないので、万人を愛するのは無理です。
その上で、その人と適度に距離を持って関わる方が、結果として相手にもきっと良いものを提供できるのではないかと思っています。
そして、第3者の目で「あーこれこれ。これが私の腹が立つポイントだよなー」みたいに分析していると、感情も少しは冷ますことができるのではないでしょうか。
私は、人との関わりは距離感が大事だと思っています。
それでも、どうしても陰性感情が消えない、怒りが蓄積してコントロールできないのであれば、もしかしたらその職場や職種は向かないのかもしれません。
引いた方が双方にとって安全なこともあると思います。
必要なのはその勇気かと。
まとめ
看護師も似たようなところがありますが、介護士の業界では若いスタッフの教育とか指導とかにあまり手が回っていないという現実があるかと思います。
経験を積む時間が十分与えられず、激務の中で一人追い詰められてしまうことも多いかと想像します。
全く関係ない職種からの転職の人も結構いるようですしね。
認知症の方の対応は、ベテランになっても大変ですよ。
それでも、絶対に相手を傷つけるようなことはしてはいけない。
それは職種がどうだとは関係ないこと。
もしそんな自分が抑えられないほど追い詰められているなら、頑張らなくていいから、逃げ出した方がまだましです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント